回転ドア事故に想う

<“不幸な”事故ではなかったはず>

 今年3月、六本木ヒルズで6歳の男の子が回転ドアにはさまれて死亡した事故は、本当に痛ましいものでした。事故のあった回転ドアのセンサーは誤動作を防ぐために甘く設定され、センサーが反応しなかったことが原因ときき、同じ歳の男の子を持つ親として、何とか防げなかったものか、怒りを覚えます。事故後に国土交通省が調べた結果では、回転ドアですでに270件の事故がおきて133人がケガをしていたといいます。“不幸な”事故ではなかったはずです。

<親の申し出に無関心な企業>

@店舗のドアで

 私の娘も、2000年夏に自動ではありませんが店舗のドアでケガをしたことがあります。当時幼稚園年中だった娘とその友達、下の息子の3人の子どもをつれて横浜市内の公営プールに行った時のことです。帰り道に大手ファーストフード店Mに、昼食をとろうと立ち寄りました。駐車場からの入口は重いガラス製の片開きトビラで、向かって左側に蝶番がありました。喜んで店に入ろうとした娘が、左足を前にして左手で体重をかけながら思い切りドアを引いたとき、ちょうどドアの右下の角が足の爪の高さにあり、鋭利な金属の角が左足の親指の爪にひっかかって4分の3ほどはがしてしまったのです。
 かなりの出血と泣き叫ぶ娘に対し、店の対応は「大丈夫ですか?」とティッシュとキズテープだけ。「消毒液はないので、隣の薬局でお願いします」という何とも冷たい対応。出入り口の地面との隙間が危険な高さであることを伝えても、「地面とドアの隙間は1cm以下のはず。ケガをしないような設計になっている」との答えです。店員に実際にドアを見てもらうと「ああ」という答。あとで事故の日と同じサンダルを履かせたところ、地面からケガの位置まで高さ1.8cmありました。
 最寄の開業医に(産婦人科でした)応急処置をしてもらい帰宅しましたが、子どもが多く利用するM社ですので、全国の店舗で気をつけてもらいたいと考え、社長あてにお手紙をキズの写真をいれて送りました。その結果は・・・返答無し、でした。治るまで1ヶ月かかりました。

Aスポーツ教室で
 現在通っているKスポーツクラブでは、子ども専用フロアに「おとこのこ用トイレ」があります。そのトビラが子どもには重いのです。“お客様の声”BOXにそのことを指摘し、手や指がはさまれる危険があると投書をしました。数日後掲載された責任者の答えは「更衣室内の別のトイレを使って」というものでした。

<私たちもあきらめず声をだしましょう>

 山中龍宏医師*(緑園子どもクリニック院長、日本外来小児科学会)が、今年6月厚生労働大臣に「役所に事故情報の収集と分析の組織が必要」と要望を出され、厚生労働省で具体的な体制作りの検討に入ったと報道がありました(朝日新聞2004年6月22日朝刊P38)。
 上記@の爪はがし事故は医療費の領収証がもらえずそのままになっていますし、Aのクラブにも再度の依頼はしていません。六本木ヒルズの事故も、国民生活センターや消費生活センター等に過去の事故時に報告があれば、防げたかもしれません。反省も込めて、親に限らず、子どもを囲む大人がもっとあきらめずに声を出していく必要があります。効率重視が弱者軽視にならないように。悲しい事故が1件でも減るように・・・。

*) 山中先生には、当研究会が発行した『イラスト版 子どもの事故予防』(2001年、合同出版)のときに監修をお願いしました。



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