携帯電話と中学教師の力

 携帯電話の所持率は、中学生にもなると、小学生の時よりぐっと高くなります。友達関係を重視したい中学生にとって、あたかも友達をつなぐツールとして魅力的なものに感じるようです。
 家庭の事情で必要である場合は別ですが、買い与えるべきか大きく迷うところです。我が家でも長男の訴えにかなり迷いました。
 そして、その結論のかぎを握っていたのが、意外にも長男の通う中学の先生でした。

1. 中学生の交友は学校区
 公立中学に通う中学生の多くの場合、交友と行動範囲は、学校、部活がほとんどです。学校や部活の時に携帯電話を持っていくのは禁じられており、塾にしても授業中は電源OFFが規則になっています。携帯を欲しがる子どもたちは友達と携帯で連絡を取りたいというのが理由ですから、つまり、通常の行動範囲には携帯は必要なく、家の電話の、子機でもあれば十分なのです。
 
2. 身近なデータがとても効く
 まさに、携帯を買い与えるかどうか迷っている時期、学年懇談会のテーマが「携帯電話に関するアンケート」でした。これは、長男の数学担当の先生が1学年の生徒を対象にアンケート調査を行ったものです。
 アンケートの結果は、所持率について、一般に新聞等で発表されている全国平均より高く出ておりとても驚きましたが、これが携帯電話の地域性なのだと気づきました。つまり、前述のように中学生の交友範囲は学校がベースで、ゆえに、中学単位でのこういった調査こそが、その中学校での真の状況なのです。子どもたちにとっても、全国平均のデータやよその地域でのトラブルなどより、まさに自分や同級生が回答したものは、本当に身近な問題として感じるのです。学校としても、携帯電話問題に真っ向から取り組むのに最も信憑性のあるデータです。
 懇談会の席では、使用料金のことも話題になっていました。知っているお宅で数万円にも及んだという話に、他人事ではないと痛感しました。
 また、しばらく経って学年が上がってからの懇談会では、「親にはまだ相談していないが、携帯電話のトラブルに巻き込まれた。どうしたらいいか。」という相談が何件かあったという教師からの報告がありました。

3. 先生がよく見ていた
 中学1年の担任の先生は国語の先生でした。携帯電話に関するアンケートの懇談会では、コミュニケーションが取れない生徒の増加がメール多用によるものではないかとの見解が報告されました。それは、ご自身の授業の中で、指名されて黒板の前でまったく話が出来なかった生徒の事例報告からでした。先生は、「携帯電話は持たないに越したことはない」とはっきり言ってくださいました。

 さて、懇談会のあと上記のことを長男に話しました。長男は担任の先生を慕っており、その先生の見解であったことが功を奏して、まだ買わないという結論にすんなりまとまりました。
 これには、携帯電話の普及やトラブルに地域性が大いに関係しているということ、中学校の学年という狭い範囲に絞っての調査や報告がとても生きていたこと、前述の先生方が生徒からとても信頼されていて生徒にとって発言力が大きいことなど、家庭では及ばない教育が功を奏していると言えるのではないでしょうか。
 今後とも、先生と生徒と家庭の良い関係で子どもたちを見守っていけたらと願っています。(工藤 美奈子)



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