子どもの手術
〜扁桃腺敵出〜

 扁桃腺摘出手術と聞いて、昔からよく耳にする手術だから心配ない、と思う人も多いかもしれません。
 しかし、実際にそれが我が子に現実として突きつけられた時の体験をご紹介したいと思います。

【手術に至るまで】
 現在12歳(中1)の我が家の息子は、元来の扁桃腺肥大もあり、幼少時から頻繁に発熱し、休日診療の病院に年に何度も駆け込む状態でした。
 「男の子は弱いけれど、小学校に上った頃から丈夫になる」という周囲の言葉にも期待しながら成長を見守っていたところ、小学校低学年の時にはほとんど 休まず通学し、ずいぶん丈夫になったと感じるようになりました。
 ところが、小学4年の頃よりまた発熱しやすくなり、近所のかかりつけの医師からも「通常の抗生物質では効かない。扁桃腺摘出の手術をしたらどうか。」と勧められました。
 その際、知人の耳鼻科医に話を聞いたところ、
「手術に踏み切るためには年に4回以上扁桃腺炎を起こすのが目安(息子はその時点では3回だった)。ポピュラーな手術だが、今でも死亡する例もある。手術が成功しても、1週間後や3週間後のかさぶたが剥がれる時期も要注意(出血が多いと危険)。以上の点から、今回は勧めない。」
と言われ、まさか死亡例まであるとは思いもしなかったことから、この時は断念しました。
 しかし、小学6年になると、扁桃腺炎がより頻繁に起こるようになり、一度発熱すると3〜4日学校を欠席することも多くなり、しまいにはその1年間だけで17日間も欠席するほど症状が悪化したため、再度かかりつけ医師から勧められて手術を受けさせる決心をしたのでした。

【病院の選択】
 幸い、信頼の置けるかかりつけの医師が
  @真夜中でも耳鼻科医が常駐している
  A扁桃腺摘出手術が頻繁に行われている
といった条件の病院をいくつか挙げてくれたので、その中から気に入ったところを選んで紹介状を書いてもらいました。

【手術当日】
 前日から入院しました。
手術に要した時間は約1時間半と短時間ですみました。
説明によると、扁桃腺と言われる喉の奥の丸いところを切除し、縫わずにおくものでした。
 息子は全身麻酔と痛みのせいか、意識がもうろうとしていて夕方までうつらうつらと眠っていました。
 夕方目が覚めた時には唾も飲み込めないくらい痛がり(そりゃそうでしょう!)、傍から見ていても可愛そうでした。
 18時頃になって、スポーツドリンクを欲しがり、医師からの許可も出たので飲ませたりもしましたが、吐き気がすると言い、またぐったりとしていました。
 そして、面会時間も残り30分になった時、突然息子が200cc程度嘔吐しました。
 なんとそれは血だったのです!
「大丈夫だからね、心配入らないよ。」
と息子に声をかけながら必死にナースコールを押しつつ、一番動揺していたのは私だったかもしれません。
 看護師さんが急いで駆けつけてくれ、「大丈夫、血の色が黒いから、これは手術中に胃に入った血だからね。胃に入ってしまった血は嘔吐しやすいの。」と説明してくれたので、ようやく胸を撫で下ろしましたが、その間は生きた心地がしませんでした。

 その後、息子は順調に少しずつ回復し、食事も重湯から徐々に慣らして手術してから6日後にはやわらかめの普通食を食べられるようになって退院、その2日後には中学の入学式に出席することができました。

【学校への連絡】
 退院はしたものの、以前聞かされた1週間後と3週間後のかさぶたの取れる時期の危険はまだありました。
 そこで、万が一、吐血した場合に備えて手紙を担任用と保健の先生用に2通用意しました。
 内容は、手術内容と出血が起こった場合の緊急連絡先(私、祖父母、執刀医)、保険証のコピーです。
 大事には至りませんでしたが、入学後3週間経過したある日、授業中にわずかでしたが息子の口から血が出てきたそうです。
 幸い、状況を知らせてあった担任の授業中であったため、担任からは「うがいをして様子を見ましょう」、といった対処をしてもらったそうです。
 あらかじめ知らせておいてよかったと改めて思いました。

【手術費用】
 息子の場合はアレルギーのある鼻の粘膜を注射で固める手術も同時に行ったので、それも加算すると、諸費用は約15万円でした。
 学資保険はすぐに下り(約1万円)ました。健保は約3ヶ月後に約10万円戻ってきました。自治体からはいくら補助が出るのかまだわかりません。
 中学1年になりたての4月1日に手術したので、補助がどの程度になるのか見当もつきません。
 自治体からは下りるまで約半年かかると言われています。

【おわりに】

 術後1ヶ月経過して、ようやく私自身、心の呪縛から開放されました。
 丈夫になるためだから、と息子を説得し、とても辛い思いをさせて受けさせた手術も、100%安全なものではなかったからです。
 特に、息子が手術当日に吐血した瞬間の後悔と自責の念は、一生私の心に残ることと思います。
 あまり悲観的になることはありませんが、子どもの手術に関しては、そのリスクもよく理解した上で、それを克服するための手段を考え、親が動じない心構えを持って臨みたいものです。

 なお2ヶ月後、検診で執刀医から「通院は卒業」と言われ、晴れて完治しました。
 今のところ息子は病気もせず、テニス部で真っ黒に日焼けしながら頑張っています。
(菅野 有希)



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