タミフルを処方された時

 インフルエンザで休んでいた中高生の子が異常行動を起こして死亡した事故が相次ぎました。原因は治療薬のタミフルではないかと言われています。一部の専門家は「インフルエンザウイルスや高熱によっても異常行動は発生する」といって、タミフルとの因果関係を否定しているようですが、影響はないと言い切れるのでしょうか。
体温計
 2年前、子どもが高熱を出してすぐ、かかりつけの小児科に行ったときのことです。診断はインフルエンザ。発熱して48時間以内ということもあってか、医者さまは当然のようにタミフルを処方されました。私はちょっとびっくりしました。少し前に、タミフルが原因と思われる脳症や子どもの突然死の報告があり、メーカーが「1歳未満の乳児への使用は慎重に」という見解をだしていたことを知っていたからです。

 私が「タミフルはけっこうです」とお断りしたら、お医者さまは断られるなど予想だにしなかったのでしょう、「インフルエンザは怖いんですよ。脳症になる子どもも一定の割合でいるんです。それでもいいのですか。」と脅かすようにおっしゃるのです。

 いいのですか、と言われても・・・。私だって具合が悪くて苦しむ子どもを見ているのはつらいし、早く治してあげたい気持ちはやまやまです。でも、普段はいたって健康な小学生ですし、水分さえとれれば4、5日の発熱に耐えるだけの体力はあると考えました。なぜ受診したかというと、アレルギーで予防接種を受けていないため、熱が出ると「はしかや川崎病などの重い病気かも」と心配だったからです。

 インフルエンザは確かに怖い感染症です。でも、親がタミフルを飲ませたために万が一子どもが取り返しのつかないことになったら、悔やんでも悔やみきれない気がしたのです。

 ひどいお母さん、といわんばかりの先生に礼をして、診察室を後にしました。あとでよく考えると、ある矛盾に気がつきました。タミフルを服用した時としない時とで脳症の発生頻度に大差がないとしたら、「タミフルでインフルエンザ脳症は防げない」ということになります。1日か2日早く治すためなら、服用しないという選択もあってよいでしょう。

 また、お医者さまがおっしゃったように、タミフルでインフルエンザによる脳症の発生を防いだり、低く抑えることができるとしたら、タミフルを服用した場合の脳症の一部は副作用である可能性が考えられます。

 今後のこともあるし、角を立てずに黙って薬をいただいてそのまま捨ててもよかったのですが、飲まない薬を出してもらうのは医療費のムダ遣いになります。何よりタミフルがもったいない。高熱に耐えるだけの体力のない幼児や受験直前の小中学生、子どもが病気でも長くは休めない働くお母さんなど、タミフルを必要としている人もたくさんいるのですから。

 薬に限らないことですが、一度許認可がおりてしまったものは、リスクが証明されなければ禁止の理由にならないとして、速やかな対応が望めないのが現状のようです。医者も行政もマスコミも、いざとなったら責任をとってはくれません。

 難しいことですが、子どもの命を守るための最終的な判断は、親がしなければならないのですね。
(水谷 千佳)



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